初見でドキッとさせられた「おもしれー個体」の話 

先日、買取が決まったギターになかなか趣深い個体がありました。



モデルとしては、Fender American Vintage 57 Stratocaster なのですが塗装を剥いであったり、プレイヤーの手に渡った後にエイジド加工がおこなわれている個体でした。

ピックガードは交換、電装系はピックアップやキャパシタが交換、ポットもおそらく交換といったところでほぼ全交換。

電装系の改造の作業の程度はかなりきれいなもので、ピックアップの選定やトーンキャパシタの種類など、かなり真剣に手を加えられたことが伺いしれるもので、
見た目のインパクトの割に木部の演奏性に関わる部分のコンディションも問題がないといった状態。
デタラメな改造ではなく前オーナー様の徹底したこだわりを感じさせる個体でした。

ただ、再販をするにあたって、次のオーナーになる方にどうご説明しようと頭を悩ませたのも事実です。

現在はネットでアプリで個人取引が便利におこなえる土壌があり、楽器も取引されていますが、個人売買でのトラブルを抱えたくないのでお店に売りにきたというお話もよくお伺いしますので、売り買いの時や普段楽器を扱う際にどういったところに気を配ったり確認したら良いのかを紐解いていきたいと思います。(今回の個体はとても参考になる資料でした。)

ブランドロゴは大事

今回のお品でいうと、ヘッドのFenderロゴに傷が入って部分的に消えている箇所があるというのは次にご購入される方にとっては、少し悩みどころかもしれません。

ただ、残っている部分でもFenderのロゴと認識、識別できることと、ブランドロゴの下部の小さな文字などの特徴やフォントなどからFenderのフォーマットに則った商品であると仮定してその他の部分の特徴や仕様と照らし合わせる資料の一部としては十分有効です。
もっと消えていたとしたら…そもそもが仮定の話なので断言はできませんが取引自体が難しかったと思います。

ブランドロゴのデカールが他の部分と比較して経年具合が違うなどがあった場合、デカールの貼り直しを疑って、検品の際に別工程でさらに確認することもあります。

塗装

他には、新品製造時の塗膜の下にある表記や書き込みなども大事です。
リフィニッシュでない場合は塗膜の下にある情報は製造時の情報であるといえるからです。

今回のようにストラトキャスターの場合、ネックを取り外して、ボディ側とネック側で塗料の移りの形が両方できれいに一致するかどうかでネックとボディに交換がないことを確認します。

一部リフィニッシュ箇所があれば木部の修繕やなんらかの偽証なども考慮にいれることがあります。

部分的なリフィニッシュは大抵は、塗装に傷が入ってしまったからなるべく綺麗にしておこうといった楽器に対しての善意の気持ちではありますが、商品特性によっては後からの加工をしないほうが売り買いの際にあらぬ心配をかけないこともあります。

シリアル

シリアルナンバーはものによってはそれだけで製造年が割り出せたり、シリアル形態で商品シリーズが割り出せたりします。

今回のお品はVシリアルのAmerican Vintageシリーズのシリアル形態、年式はネック内側にスタンプされているのが特徴です。

プレートシリアルの形態の怖いとことは、プレート自体は交換が容易なパーツであることです。
プレート裏に付着した塗料の感じが製造当時からと判断して良いのかまだ新しいと判断してさらに厳しい目を向けて塗装を再チェックするのか、プレート裏だけで交換かどうかを断定しきれない状態の場合は、ギター本体の仕様をシリーズやモデルの仕様と相違ないか再確認することになります。

プレートがVだからアメリカン・ヴィンテージシリーズとアプリオリには証明できず、製品の特徴、木部、塗装、次項に上げる付属品などの状況証拠も踏まえて、それぞれの要素が相互に証明し合う形です。

付属品

今回の個体は残っている付属品が恵まれていました。

年季の入ったFenderのツィードのハードケースが付属していて、中に新品購入時についてくる紙(販売当時のデザインのものになるので年代の特徴がでることもある)や、個体のシリアルナンバーの記載のある紙があることなどもあり、これまでの確認の最終的な後押しとなったという感じです。

電装系の交換前のオリジナルパーツなども残っていれば尚良かったですが、中古品という特性上、新品販売時のメーカーの紙が残っていることも珍しく、改造こそあれど、お品物のプレイコンディション面の管理が行き届いていたことに納得がいきました。

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