買取をしている店舗が語る、高額買取のコツ
実際の買取を通じて見えてくる『何が高額買取につながるのか』
連日数十点の楽器を買取させていただいておりますが、内情も交えながらご紹介したいと思います。
それゆえ、部分的に主観も入りますが、誂えの表現ではなく実際のところとしてお読みいただけますと幸いでございます。
お客様にとっては高く売れた方が良い。
- 買い替え
- もう使わなくなった
- 引っ越し・部屋の整理
- 奥様に強く言われて
- 終活・ご家族の遺品
など、楽器を売りに出す理由やタイミングは人それぞれ異なりますが、思っていたより高い値段がついて残念がるお客様を見たことがありません。
特に店頭買取では対面なので、お客様のお気持ちは会話や表情を通じてとてもよく伝わります。
何が加点となるか。何が理由で加点にならないか。
お客様に「あと少し値段がつけば置いていくよ」と仰られた際に、査定スタッフはどういった点をプラス評価として加点することができるか、または、どういった点がこれ以上値段を上げられない理由なのかを考えます。ここを押さえると、売却先店舗を決めた後も、最終最後まで高く売却するための本質が見えてきます。
お客様にとっては、大切にしてきた楽器も多くございます。そのような楽器が不当にとまでは申しませんが、本来の価格に達さずに買取をされてしまわないように、この記事でポイントをご紹介します。
最初に。少しでも高く売るために知っておくべき知識
心構えと事前の調査
まずいくつか本質的な話をご紹介します。クリーニングや、付属品などの一般的なお話は後半にまとめます。
- どれだけ交渉しても売るものが変わるわけではない。
- ほとんど使っていなくても一度人の手に渡った時点で、再販時には新品とは言えない。
- 楽器店は利益の出ない活動はしない(できない)。
いきなり楽器店の都合のようですが、お伝えしたいのは、中には度を超えた期待をされているお客様がおられます。売値が税込み11万円(実売価格は10万円)の商品を95,000円では買えません。販管費を踏まえればマイナスの可能性さえあります。
あまりに大きな期待をしてしまうとそれに適う価格を提示できる店は一向に出てこず、いつまで経っても売ることができないという状況に陥ります。さらに商品によっては相場の変動により買取価格も下がってしまうことがあります。こうなっては本末転倒なのでお持ちの楽器の中古市場相場を把握しておくなど、事前に調査・把握をしておくと良いでしょう。
大前提として、複数の楽器店に見積もりを出すことは必須です。
査定依頼を出す前にイメージで選んだ楽器店の価格が一番高い可能性はどれほどあるでしょうか?
- 「どこよりも高く買います。」
- 「最後にお声掛けください。」
- 「一番高いところより○%アップで買います。」
など、様々なセールストークも目にしますが、買取価格は各楽器店の得意・不得意や在庫状況などによって差が出ることが普通です。逆にどの楽器店でも同じ価格が並ぶことは奇跡と言って良いくらいないことです。
「買取上限価格」が高い店が最終的に一番高いには直結しません。状態による減額基準は店舗により様々です。
「買取価格20%アップ、30%アップ」という表記のところもありますが(私たちからするとどんな通常価格ならそんなにも割合を上げられるのかと思いますが)「肝心なのは最終的にいくらなのか」です。
楽器専門店以外の選択肢
さて、ここまで楽器店という言葉を並べていますが、楽器専門店以外はあまりお勧めではありません。
極めて一般的なものや、個体差がないもの、誰が見てもわかるような商品なら問題ないこともありますが、大半のそうでない商品は仕組み的に高額買取が難しい場合があります。
と言いますのは、専門店は再販価格には非常に気を配っています。他店よりも安く売ることに(相場を崩すことに)恐れがあります。
売値の設定は、相場だけでなく専門知識、調整技術、経験、付随するサービスなど、これらを伴わないお店の売値やフリマサイトなどの個人売買の価格より高くなければなりません。
専門店には、日々知識を深め、技術を磨き、楽器の売買にまつわるサービスの創造・改善に努めているから成し得る販売価格があるのです。
その商品が「周りよりも高い価格でも売れる」と自信を持って値付けできる店の方が、買値も高くなる傾向があると見て間違いありません。
ヤフオクやメルカリを代表とするC to Cの売り方もあります。
売却額だけを見ればこれが一番高くなることがあります。
しかし手間や時間、その他の苦労を伴います。
実際に検証した内容を記事にまとめてありますのでご覧ください。
その他
『まとめて売る』
「まとめて買うから安くしてくれませんか?」 の逆バージョンですね。通用する楽器店は多いと思います。しかし新製品などは相場の変動が早いので溜め置かず、早く売った方が良いという場合・条件もあります。状況やお手持ちによってご検討ください。
『管楽器は特に早めに』
管楽器の調整費用は非常に高額です。しかも、使っていなくてもタンポやコルクの劣化が進みます。調整が必要な箇所が増えるほど買取価格は下がってしまいます。調整費用が買値や、時として売値を超えてしまうことも珍しくありません。
『このようなことを言うお店はお勧めできません。』
楽器の知識、対応力がないと言っているに等しいです。
- ギターやベースは弦を張っていないからジャンク扱い
- 弦が錆びていたら減額
- 改造していたらジャンク扱い
- ネック折れ、音が出ない、本体に割れがあるものは買取不可
お客様がお手元でできること(一般論)
※『一般的に』このようにしておいた方が良い価格を引き出すことができるという方法です。当店の見解は別枠に交えます。
方法1. クリーニング
商品についた埃や汚れを、クリーニングで綺麗に落としましょう。
埃が溜まりやすい場所、汚れがつきやすい場所がありますので、これらをクリーニングしておきます。
<例 エレキギターの場合>
ブリッジやコントロール部、ノブ周り、弦の下などに汚れが集まりやすいです。
画像はピックアップの周りの汚れのBefore Afterです。
レリック加工が施されているモデルは注意が必要です。わざとくすませている金属パーツをピカピカにしてしまうと逆にお値段が下がってしまう場合もあります。
ギター本体にステッカーを貼られている場合がありますが、これを剥がすのは楽器店のスタッフでも一苦労です。ラベルはがしなどを用いて剥がしておくことをお勧めします。
この画像例はかなり小さなステッカーですが、もっと大きなものが裏表に貼られていることもあります。
ギターのクリーニングについては別記事を上げています。ぜひこちらをご覧ください。
楽器店直伝!ギターのクリーニング方法
<例 管楽器の場合>
管楽器に関しては目に見える部分のクリーニングだけにしておくのが吉でしょう。理想は各部品を分解してのクリーニングですが、これには専門知識が必要です。
「分解したはいいが、元に戻せない」「部品をなくす」などの危険性があるため、無理をせずにできる部分だけにしておきましょう。
こちらは付着した指紋を拭き取った画像です。
<例 機材類の場合>
ボタン横に付着した汚れにご注目ください。ひとつひとつはとても小さな汚れですが、これらがある・ないとでは、全体で見たときの「中古感」がかなり変わってきます。これはつまり、再販時のコンディションランク=売値に影響する項目なので、ファーストインプレッションで「きれいだな」「あまり使用感がない」と思われれば評価が高くなる可能性も増します。
≪当店の考え方≫
Qsicではクリーニングは、本来は楽器店である私たちがおこなう仕事だと考えています。中古専門で営業しておりますので「汚れを綺麗にするのは当たり前」です。汚れていてもそのままお持ちください。
「クリーニングをしたらどれくらい綺麗になりそうか」「クリーニングで除去可能な汚れを理由に減額をしない」このような姿勢で査定をさせていただいております。
方法2. 新品購入時の付属品を付ける
アダプタやケース、箱、取扱説明書など、新品購入時に付属されるものはなるべく捨てずに付けるようにしてください。
アダプタや取扱説明書があると、次のお客様が購入した後もすぐにご使用いただけます。売値にも影響します。特殊なアダプタなどの場合はお値段に変化が生じやすいので忘れずにお付けください。
ギター類ではハードケースやアーム、管楽器ならマウスピースやリガチャなどの付属品も付けるとより高く売ることができます。ケース類はデリケートな楽器を安全に持ち運ぶためのものですので、付属していると次のお客様のためにも安心です。
購入時に「邪魔になるから要らない」と、ケースをお断りになるお客様もおられますが、売るときのことを考えて持っておかれるのが良いでしょう。
[例1] Gibson 60s Les Paul Standard Faded
・ハードケースの有無:おおよそ10,000円の差額発生
[例2] Buffet Crampon RC B♭管
・ハードケースの有無:おおよそ10,000円の差額発生
[例3] Blackstar Series One 50 Head
・元箱の有無:おおよそ500円~1,000円の差額発生
・電源ケーブルの有無:おおよそ1,000円の差額発生
・フットスイッチ(FS-3)の有無:おおよそ10,000円の差額発生
≪当店の考え方≫
ケースについては実際に新品購入時に付属しているものを取り寄せるとなると非常に高額となってしまいます。
「要らない」というお客様がおられるように「純正でなくても構わない。本体が目的なのでその分安く買えるならそれに越したことはない」というお客様もおられます。
完全な状態に固執しても、本体は中古品なのにケースだけ新品というアンバランスも発生します。これは売り手にとっては減額が大きい、次の買い手にとっては無駄に高いなど、誰も得をしないパターンも存在します。もちろん完全な状態を望まれる次点のお客様へは取り寄せなどで対応いたしますが、付属品の新品価格を丸々減額としなくても乗り切れる(減額項目を減らす)方法はあると考えています。
ただしフットスイッチやアダプターのように「それがないと使用に支障があるもの」は最低でも同等のものを用意しなければなりません。なくさないようにしましょう。
方法3. 新製品でも使わないと感じたら、早めに売る
キーボードや音響機材などでシリーズ化されている商品は、通常は新しいシリーズの方が高く売ることができます。
- 「買ったはいいけど、自分には必要なかった」
- 「思っていたよりも出番がなかった」
と感じた場合は、そのシリーズのモデルが型落ちになる前に売ってしまうほうが断然お得です。
※ビンテージ品などは時間が経つ方が価値が高騰するものがございますが、ここでは一般的なものについてです。
[例1] BOSS GT-100(2012年3月発売)
後発GT-1000(2018年4月発売)が
発売される前の買取価格:20,000円~23,000円
発売された後の買取価格:18,000円~20,000円
現在(2020年9月時点):16,500円~18,000円
[例2] Roland JUNO-Di(2009年6月発売)
後発Roland JUNO-DS(2015年10月発売)が
発売される前の買取価格:36,000円~40,000円
発売された後の買取価格:30,000円~35,000円
現在(2020年9月時点):22,500円~27,000円
≪当店の考え方≫
『使う』という目的は、売却額以上に価値があります。しかし、ビンテージ品を除いたほぼ全ての商品は、放っておいて値段が下がることはあっても上がることはありません。
確固たる使う理由がなければ、売却額に関しては早いに越したことはありません。
まとめ
冒頭から、途中の一般論にも当店の見解も交えてお伝えさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。
「少しでも高く売るためのコツ」については色々な方が記事を書いてられますが、実際に買取をしている側からの、しかも本音は、ご参考いただけることもあったのではないでしょうか。
あまりにも内情を赤裸々にすることは自分の首を絞めるのではないかという意見もありましたが、私たちは決して「安く買いたい」と考えているわけではありません。お客様に楽器の売却を通じて納得・満足、時には感動していただきたいと考えています。それが創業の理念です。
もし今楽器のご売却をお考えでしたら、当店の無料査定依頼をご利用いただき他店と合わせて検討してみてください。