弾きこなすにはクセのある楽器などもあるので「買ってみたけれど、どうしても仕様上の都合で演奏がしづらかった。」という演奏者側と楽器側のミスマッチは時折起こりますが、有名ブランドの定番モデルや、ハイエンドモデルでもほぼ新品同様の状態ですぐにお売りになられることもあり、個人的には少しもったいない気もします。
もし、エレキギター(エレキベース)を新しく購入して、音色がお気に召されなかった場合は意外と楽器の調整をしてやると音色や楽器自体のサウンド面の印象が覆ることがあります。
弾きやすさだけではない弦高調整
年間に大量の中古のエレキギターを調整をしていると「セッティングでここまで見違えるのか」と思わされる個体が多々ございます。
例えばレスポールタイプで、「サスティーンがない…。」「生音がほとんど弦自体の鳴りでネックが響いている感が薄い」場合に、弦高が低いセッティングになっている場合があります。
弦高が低いローアクションで調整したギターのメリットとしては押弦によるピッチのズレが少ない。押弦に力をかけずに弾ける。力がかからないので速く弾く場合に有利であることが多い。などがありますが、下げることで、ギターのタイプによってはそのギターの音色の良さが薄くなったりすることがあります。
弦高は低いほうが弾きやすくて良いというのが一定の支持を得た論ですが、自前のギターの弦高やセッティングを色々試すと必ずしも自分にとってのいいフィーリングはローアクションではないと気づく方もいらっしゃるかもしれません。
「あれ?意外と6弦側12f計測の2.0mm演奏に支障ないぞ」
ネックの仕込み角やブリッジの構造、ネックスケール、フレットの高さや幅など、弦高以外に演奏性に関わる箇所はたくさんあります。
実際にあった個体
6弦側12f計測で1.6mmにセッティングされていたハイエンドブランドのレスポールタイプが入荷していた時は、「さすがハイエンドブランド、つくりも良く音づまりもビビりも起こしていない」という感想を持ちました
しかし、チューンOマチックの構造において弦高が低い(ブリッジが低く設定されている)ことは、テールピースの締め具合の設定とピックアップの高さ設定の調整の幅が狭まることになります。
今回の画像の個体は、エスカッションと弦との距離やピックアップの高さの調整のビスの長さからも6弦側12f計測の1.6mmはさすがに下げすぎであるしサウンドにも悪い影響を出しているとの判断で、クリーニング後に下記の手順で調整しました。
(事実エスカッションの位置よりピックアップのカバーがかなり凹んだ状態までピックアップを下げないとポールピースの磁力が弦に干渉する状態にありました。)
1.ネックをトラスロッドで調整し反りを正してまっすぐに寄せる。
2.ブリッジの高さ(弦高)調整。今回は12f計測で6弦側2.0mm、1弦側1.5mmとする。
3.ブリッジに合わせてテールピースを調整(ブリッジに弦が干渉しない位置で良い締め具合を見つける)
4.ピックアップ高さ調整(ポールピースの磁力が弦の振動に影響しないように距離をとる)
5.オクターブチューニング
サスティーンは伸び、ネックがしっかり鳴ってロー感が増した気がしました。
元々、ヴィンテージ系サウンドを狙って製造されていた商品だったので高域の抜けの良さや倍音の感じは良かったのでさらにバランスよくアンプから出るようになりました。
テールピースはベタ付けだとサスティーンが弱くなるとも言われますが、ある程度テールピースを締めてあげて弦のテンション感があるほうが木部自体はよく響くので、そのほうがポジティブな影響を受けやすかったりします。
そもそもテールピースがベタ付けになりサスティンがなくなるような場合として考えられるのは、ブリッジが低く設定されており、テールピースを締め切ったうえでも弦のテンション感が稼げていない状態であることが推測されます。
ピックアップを下げきれず、ポールピースが弦の振動の邪魔をすると音色もサスティンにも影響します。
セッティングのビフォーアフターの写真を載せたのでちょっとした違いを探してみてください。
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