Cycloneの祖先はFender Jag-Stangではない? 

最近、買取が決まったCyclone(サイクロン)

久々に入荷してきた気がします。
今回のはSquier製の個体ですね。

スクワイヤのサイクロンは2004年のヴィンテージ・モディファイド・シリーズのひとつとして
2009年12月には6色展開、各色200本、日本限定で販売。
直近は2020年にSquier Paranormal Seriesでピックアップ配列が3シングルにジャガーのスイッチのコントロールで販売されたり、レギュラーではないものの度々復刻されています。
使用ミュージシャンが多いのも人気の理由でしょうか。

Cyclone(サイクロン)

ラージサイズのヘッドにはサイクロンモチーフのキャラクターがプリントされています。

ムスタングの流れを汲むモデルなのでショートスケールかと思いきや、24.75インチのミディアムスケールというFender系のギターとしては珍しい仕様。
6点支持のシンクロトレモロなのもあって独特の設計のギターに仕上がっています。

3wayのトグルセレクターで、フロントがシングルコイルのリアはハムバッカーなのも個性的です。

設計が似たギターにカート・コバーンのFender Jag-Stang(ジャグスタング)がありますが実はそちらより前に元ネタが出来上がっていたと言われています。
(ジャグスタングは名前の通りジャガーとムスタングの融合モデル)

Fender Jag-Stangは1993年当時カート・コバーンのアイデアをもとにフェンダーで設計開発されたモデル
対して今回のCycloneは1990年フェンダーUSA、R&D部門の首席エンジニアの後藤誠輝氏が、上司であるジョージ・ブランダ氏から「NAMMショー出展するためのギターを考えて欲しい」と言われて作られたムスタング・カスタムが元になったモデルです。

日本人がデザインしたモデルだったんですね。
Fender Custom Shop設立の際に1987年にフジゲンから杉本眞氏の技術指導チームを招き入れたり、Fenderは意外と日本人が活躍している印象です。

ムスタング・カスタムのちのサイクロン

ところでそのムスタング・カスタムがどのようなギターだったのかについてですが、

「ムスタングを現在のミュージック・シーンでの使用に最適な形状とする」をコンセプトとしたギターで

・スケールをレスポール等と同様の24.75インチ
・ストラト・タイプのボディ用に開発されたケーラー・タイプのビブラート・ユニットのブリッジ・アッセンブリーを取付けるためにボディ厚をストラトと同サイズの1.75インチまで広げる。
といった構造で、細かい仕様は

・エボニー指板、メイプル・ネック
・セットネックジョイント
・ボディはアルダー材にキルト杢の入ったメイプルをトップに張ったもの
・木目の見える「トランスルーセント・レッドサンバースト」フィニッシュ
・金属パーツは全てゴールド・パーツ
・ピックアップにはネック側にシングル、ブリッジ側にハムバッカーを搭載
・後藤氏がクラプトン・モデルのブースターを参考に独自に開発したミドル・ブースターを搭載

ムスタング・カスタムをCustom Shop製でリリースしてほしいなと個人的には思いました。

webで写真を見ましたが、2023年のニューモデルと言われても納得しそうなほど完成度の高さが見た目からも伝わってくるギターでした。

ムスタング・カスタムは2本作られ、1本はドイツに向けて出荷され、もう1本はどこに売られたかは不明だそうです。

1997年、サイクロン登場

1990年代半ばに新しいギター製作の企画が持ち上がった際に、当時の日本からのムスタング再生産を望む声があったことなどから、Fender社に残っていたムスタング・カスタムのデータにスポットが当たり、そのデータが元となり、新しいギターとしてサイクロンが生まれました。

ターゲットとした購買層設定が、初級から中級のユーザー、所為スチューデントモデルであったため、ブリッジはケーラーではなく、シンクロナイズド・トレモロを採用など細かい変更が加わり
デュオソニックなどと同じピックガード形状を採用し1997年、サイクロンが発表されました。

バリエーションが後に増えるサイクロンですが、元々のオリジナルはメキシコ製でした。

後藤氏がサイクロンの他にも設計したもの

現在、後藤誠輝氏はSuhr Guitars & Amps / JS Technologies, Inc.に所属されているそうで

Suhrで配線アッセンブリの設計などに携わっておられるようです。

Fender関連といえばそうですが、SuhrとSquier by Fender Cycloneにちょっとした共通項があるのが少し面白いと感じた次第です。

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