ここ数年はエフェクターの新品が中々手に入らないといった時期もありましたが、最近ではかなり状況も落ち着いてきました。ただ円安・運送コストの増加などもあって、新品価格が軒並み値上げしているのは心痛し。利益がなければ存続もできないので致し方ないことですよね・・・。
営利企業であればできるかぎり利益を追求することが普通だと思いますが、プラスが出る状況でありながらあえて値下げをおこなった事例をご存知でしょうか?今回はそんな商品のお話を1つ。「BOSS DD-3」について、ご紹介します。
1983年、BOSSは世界初のコンパクトペダルタイプのデジタルディレイとなるDD-2を発売します。BOSSの技術を世に知らしめる傑作として人気を博しますが、いきなり珍事に見舞われることになります。それはパーツ代の下落。
発売当初はデジタル機器の黎明期であり、使用しているチップはまだまだ高価でしたが、技術の進歩を受け、この頃から量産体制がとれるようになったことにより、徐々にパーツ代が下がることになりました。
BOSSはそれを受けて新品価格の値下げを実施しますが、それでも尚パーツ代の下落は止まらず、原価がどんどん安くなっていくことに。
このままいけば大幅に利益を出せる・・・とならなかったのがBOSSの素晴らしいところ。再度新品価格の値下げを検討します。ただ、事ある毎に値下げをするのは、商品自身の価値を下げ、発売当初に購入したお客様から不信感を持たれるかもしれない、と考え、なんと構造は変えずにニューモデルとして発売することで価格調整に踏み切りました。それで1986年に誕生したのがDD-3なんです。DD-2の発売からわずか3年の出来事でした。
DD-3のアップデート版であるDD-3Tの発売が2019年。DD-3から33年経っていることを踏まえると、よほどな状況だったことが読み取れますね。ただ目先の利益に囚われず、お客様の目線に立って考えている企業であることが良く分かるエピソードでした。BOSSが今も世界で支持を受けるメーカーであることも納得です。
ちなみに最初期のDD-3はDD-2と同じDSPチップを使っているので、DD-2そのものといっても過言ではありません。DD-3は製造時期によって、DSPチップ→LSIチップ→表面実装チップと仕様が変わっています。相場にも違いがあるので、買取をご検討されている方は一度中身を確認してみてはいかがでしょうか。
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