デジタルシンセについている謎のレバーに戸惑ったことはありませんか? 

デジタルシンセに時々ついているこのレバー。

※写真は、以前に買取させていただいたRoland VK-7

オルガンをサンプリングしたデジタルシンセに主についており、触ったことがある方もいるでしょう。

これを出したり引っ込めたりすると、音が変わります。
感覚的にサウンド作りができて楽しめるのですが、デジタルネイティブの方には
「一体何なの?」という方も多いハズ。
今日はこのレバー(ドローバー)の正体に迫っていきましょう!

ドローバーとは

このレバーは、ドローバーと言われます。
元々はハモンドオルガンに搭載されており、ハモンドオルガンはこれを使ってサウンド作りをします。

ドローバーは直訳すると、Draw=引っ張る。bar=棒です。
見たまんまの名前です。

このドローバーは、前後に動くようになっています。
これを、引っ張ったり、奥に押し込んだりして、オルガンの音色を変化させる事ができます。

9本の各ドローバーの名前

そもそも電子オルガンは、パイプオルガンが元になってできた楽器。
電子オルガンのドローバーの名前も、ハイプオルガンのパイプを継承してこういった名前になっています。

左から、

16フィート
5 1/3フィート
8フィート
4フィート
2 2/3フィート
2フィート
1 3/5フィート
1 1/3フィート
1フィート

そう。長さの単位である「フィート」を名前に付けています。

これは、パイプオルガンのパイプの長さをフィートで表していた名残。
ちなみに1フィート=30.48cm。

そして、電子オルガンでは、8フィートが基音のCの音になります。
基音のCに、その他のドローバーで色付けをする(倍音を加える)事により、色々なサウンドを作り出すことができます。

含まれる倍音は以下の通り。

16フィート(茶=基音の1オクターブ下のC)
5 1/3フィート(茶=基音の5度上のG)
8フィート(白=基音のC)
4フィート(白=基音の1オクターブ上のC)
2 2/3フィート(黒=基音の12度上のG)
2フィート(白=基音の2オクターブ上のC)
1 3/5フィート(黒=基音の17度上のE)
1 1/3フィート(黒=基音の19度上のG)
1フィート(白=基音の3オクターブ上のC)

普通、楽器の音は倍音を含んでいます。

例えば、ギターとピアノのサウンドが違う。といった場合、基音に対して含まれる倍音の種類や大きさがそれぞれ異なるから、サウンドの「違い」が出るということなのです。

この倍音を電気的に作り、基音と組み合わせてサウンド作りが楽しめるよ。
というのがドローバーの役目です。

引き出す長さと、9本のドローバーによる様々な組み合わせで、約2億5千3百万種類もの音色をつくり出すことができます。

ドローバーの色

見ての通り、ドローバーには色がついています。
これはおしゃれで色を変えているのではなく、ちゃんと機能的な面で色分けがされています。

白いドローバーは、オクターブ高い完全協和音です。
高いほうのドローバーを引くと音の輝きを増します。

黒のドローバーは、基音に対して5度、3度という関係の音で、豊かな広がりあるサウンドを作るときに使います。

茶色のドローバーは、基音の1オクターブ低い音と、その音の第3倍音(基音からは5度の音)です。深さをサウンドに加えるときに使います。

サウンド作りができるとはいえ、それはあくまでも
「オルガンがその他の楽器のサウンドを真似をした」
というサウンドで、現代のデジタルシンセのようなリアルなものではありません。

しかしそれが、逆に「オルガンらしさ」につながり、現代でも多くのミュージシャンに愛されています。

こういった仕組みを知らされると、昔の人も天才的な発想と探究心をもって、楽器を発明、製作していたのだな。
と思い感嘆してしまいますね。

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