アコギ豆知識 スキャロップドナット 

ギター用語で「スキャロップ」という言葉が用いられるとき、一番に連想されるのは指板をえぐる「スキャロップドフィンガーボード」だと思います。あるいは「スキャロップドブレーシング」でしょうか。今回はちょっとマニアック?なスキャロップドナットをご紹介します。

スキャロップドナットは名前のとおり、弦溝の間がえぐられた形のナットです。主に以下のような効果を狙って採用されます。

1.ナット上での各弦の振動の干渉を阻害し、音像の分離感を高める。2.ナット自体の重量に変化を与えることで、開放弦の音の立ち上がりや音質を押弦時のそれと近づける。


「フラメンコギターに採用されたスキャロップドナット」
立ち上がりがよく、分離感が抜群のサウンドはフラメンコのような速いパッセージが多いジャンルや、ソロギターのように開放弦が多用されるスタイルにはもってこいです(逆に、コードストロークが主体の弾き語りになどには解像度が高すぎる音色はあまりマッチしないかもしれません)。


「ケン・スミス(BT-4 ’89)に採用されたスキャロップドナット」
こちらは少しギターとは採用の経緯が異なるかもしれません。押弦時と開放弦の音質を近づけるべく材質にブラスを用いつつ、立ち上がりを損なわないようにナット自体の重量はなるべく軽く・・・といった意図がありそうです。

地味ながらなかなか効果のある加工で、もっと多くの楽器に採用されていてもおかしくないと思うのですが、実際には高級な手工ギターやベース、またはフラメンコギターなどの重量が軽いギターにたまに施されている程度で、目にする機会はそう多くありません。

「鳴りを高める」とういうよりは、その楽器の「鳴りすぎる部分をうまく引っ込ませてトータルバランスを向上させる」加工であるため、そもそも楽器自体にレベルの高い鳴りが要求される、個々のギターやベースごとにナットを削るべき位置と深さなどが異なってくるため加工のメソッドが一般化していない、といった理由があるそうです。

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