組合わせは無限大?!PUレイアウト 

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私が高校生くらいの頃、今よりもまだまだ紙媒体の需要も高く様々な楽器系雑誌が出ていたものでございます。

当時、数年に1度、楽器メーカーが主催する「デザイン大賞」の様な企画がございまして優秀賞に入った上位何点かのデザインは、

『それを基に実際製作した物が商品として貰える』

というコンテストが行われていたと記憶しております。
まだ10代半ばぐらいの私は、数十万円もする所謂「ハイエンド系楽器」が自分で買えるわけもなく(今もですが・・・)先程申し上げたようなコンテストがある度に応募したものです。

楽器に対する知識も乏しい高校生でしたので、ボディ形状のデザインはともかくとしまして・・・

≪より奇抜な今までに見た事が無い組み合わせのレイアウトをすれば審査員の目に留まるのではないか?!≫

などと考えハチャメチャなPUを搭載したデザインを投稿していましたが、一度も入選する事はありませんでした。

今考えるとそれは当然の事だなぁと思う訳ですが。
なぜならば、1950年代より様々な試行錯誤を繰り返し、様々なメーカーが様々なモデルでPUレイアウトの組み合わせを考えてきた結果として
≪採用されなかったレイアウトばかり≫
を私は何の狙いも無く「奇抜で目立ちそう」という理由だけでデザインしていたのですから。

ご存知の方が多いと存じますが、ストラトのスリーシングル、フロント・センター・リアの設置角度、ポールピースの高さetc…どれをとっても緻密な計算があり狙いとしてレイアウトされているのでございます。

フロント、センターはおおよそ真っ直ぐに、リアは斜めになっているのは弦間の広がりという構造上の特性と、弾く位置によって弦振動の幅が変化するという物理学的な観点からの計算のもとに選択されたレイアウトなのです。
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また、レスポールの定番はフロント、リアという2PUのスタイルでございます。
歴史的には3PUのものもありますが、普及しなかったのはやはりサウンド的にも電気構造的にも使い勝手が悪かったからでしょうか。

ストラトシェイプの中には、「S-S-H」と呼ばれるシングル・シングル・ハムバッカーというレイアウトや「H-S-H」と呼ばれるハムバッカー・シングル・ハムバッカーという変則なレイアウトですが組み合わせの妙により成功している例もございます。
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これも、よく見ると非常に理にかなったレイアウトでございます。
S-S-Hは、弦振動が一番小さくなるブリッジ付近に高出力のハムバッカーを搭載する事で、ストラト系のモデルでもレスポールのような太い音も出したというプレイヤーの要望のもと広く支持されたレイアウトでしょうか。

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H-S-Hはハムバッカーの太いサウンドをメインに使いつつも時には、ストラトのような高音が抜けるサウンドを使いたいという要望を可能にしたレイアウトでございます。

この二つは今となっては定番ですが、ストラトタイプとレスポールタイプの良い所取りを実現した功績は非常に大きいのではないかと個人的には思います。

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他にも、テレキャスタータイプでフロントにハムバッカーを搭載するレイアウトなどは既にバリエーションの一つとなっていると言っても過言ではないでしょう。

しかし、テレキャスタータイプで逆のフロント:シングルにリア:ハムバッカーを搭載したモデルはほとんどありません。

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ボディ材や搭載PUによってもちろん変わって参りますが・・・一般的にシャキシャキとしたサウンドが魅力のテレキャスター。
そのサウンドのバリエーションとしてフロントの甘いトーンも一つのスパイスでしょう。

フロントにハムバッカーを載せるのはその甘いトーンの部分をより効果的にするために高域が出過ぎない特性を利用したチョイスです。

そういった狙いとは裏腹に、レイアウトをあべこべにしてみたら・・・狙いが分からなくなりませんか。

リアのシャキシャキしたサウンドを高域の抜けにくいハムバッカーを置くことにより、マイルドになってしまう。
フロントの甘いサウンドと共に、シャキッとした切れ味鋭いサウンドを併せ持つというのがテレキャスの醍醐味です。
それを失う可能性を持つレイアウトをわざわざ作りはしませんよね。(2ハムバッカータイプもたまにあるのですが、あれはテレキャスターボディのデザインが好きだけどレスポールのようなサウンドが好みという方が組み合わせて使っているのでしょうから今回のテーマとは少し離れてしまうので割愛します。)

しかし、好みの部分も大きいサウンドメイクの話です。
「上記のようなサウンドが欲しくてわざとやってるんだよ!」
という確固たる信念のもとに行うのでしたらそれは独創的なサウンドになるかもしれません。
昨今の多様化している音楽ジャンル、一昔前からすると敷居の低くなった楽器のオーダー製作などを考えると、また新たに多くの人に支持される目からウロコなレイアウトが生まれるのはそんな新たな感性からかもしれませんね。

 

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