ドライバー1本でサウンドが変わる!? 

買取させていただいたギターをクリーニングして再調整する際に気をつける点は様々あるのですが、今回はピックアップの高さについて記事でお伝えしようと思っております。

ピックアップの高さはサウンドやリアクションに大きな影響を与えています。
「ミドルの美味しい部分が無くなった。」とご相談を受けてセットアップを行った際は、最終的にはピックアップの高さが大きく影響していました。

お持ちのギターのサウンドに少し不満がある場合でも、セットアップで解消できる部分もあるかと思いますので一助になれば幸いです。

ピックアップの高さってどう判断するの?

最終フレットを指で押さえた状態で計測したいピックアップのポールピース上から弦までの「隙間」をスケールで測るだけ。
・隙間が広いとピックアップの高さは低い状態
・隙間が狭いとピックアップの高さは高い状態

※最終フレットを押さえてからポールピースと弦との距離を測るのは徹底してください。
(基本的には押弦して演奏するので、最終フレットを押さえて押弦した状態を再現しています。)

「結局、最初の状態が良かった!」となった場合に元に戻せるように、調整前に記録を取っておくのが良いです。

PU脇のビスを締めたり緩めたりするだけ

まずはネックの反りを調整し、サドルやブリッジ側で弦高を調整した後におこなうのが手順です。
※今回の記事ではネックの反りや弦高調整は割愛しますが、ネックの反りや、弦高が気になる場合は近くの楽器店やリペアマンに依頼するのが良いでしょう。当店でもセットアップを行っておりますのでお近くにお住まいの方はぜひご利用ください。

弦とピックアップが近すぎるとノイズも多くなり、ピックアップの磁力が干渉してピッチが悪くなったり、サスティンが極端になくなったりします。
(EMGのアクティブピックアップは、パッシブのものと比べて多少近くても大丈夫だったりします。)

ひとまずは最終フレットを押さえて、ピックアップとポールピースの隙間を開けます。
振動した場合の振れ幅にかすらない程度に距離をあけましょう。

ピックアップ脇のビスの締める、緩めるで高さを調整します。

エスカッションマウントやピックガードマウントの場合は、締めればピックアップ高は高くなり、緩めればピックアップ高は低くなります。
※エスカッションに隠れるほどピックアップを下げてしまうとマウントしているビスがピックアップから外れてしまうことがあるので注意が必要です。
(PRSのギターは強いスプリングでピックアップをマウントしてあるので、ビスが外れてしまうと元に戻す際はなかなかの苦労で泣きそうになります;;)

ダイレクトマウントの場合、ピックアップの下にスポンジや高さ調節のためのクッションが挟んであったり、ビスの部分にスプリングがあるのでビスを締めればピックアップ高は下がり、ビスを緩めればピックアップ高は高くなります。(スポンジやクッションがヘタっていれば高くできない場合があります。)

ピックアップは同じ高さに設定しても、ピックアップポジションによって音量の差が出ます。
・リアを一番高く、センター、フロントの順番に低くなっていき、斜めになるように調整するのがベターです。
・1弦側と6弦側で弦の太さや音量が違うので6弦側に比べて1弦側を高くしておくのもポイントです。

ピッキングの際にセンターピックアップのボビンにピックが当たって邪魔になる場合は適宜下げましょう。
各ポジション毎の音量差をなくすことを優先するのか、音量差が出るのを良しとして他のなにかを優先するのかはプレイヤー次第です。

どう変わるか

ピックアップを高く設定すると
音量が上がり、アタック感が際立ち派手な音になります。
高すぎると、音が割れる。サスティンが悪くなる。傾向としては高域がキンキンしてミドルやローにふくよかさが無いイメージが近いです。

ピックアップを低く設定すると
音量は高い場合よりも下がります。マイルドなサウンド。
下げすぎると、パワーが無いように感じたり、ヌケが悪く、音がぼやける傾向にあります。

高機能、高額なピックアップに載せ替えても高さ調整が上手くいってないと非常にもったいないです。
パワー良し、音が割れておらず、ピッキングニュアンスも出やすい、そんなバランスを確認していきましょう

具体的な数値をここであげていないのは、ネックの仕込み角、ダイレクトマウントかそうじゃないか、他ポジションのピックアップの音量との兼ね合い、など様々な要因で、規定した数値に調整するのがベストではない場合もあるからです。
妥協点というと聞こえは悪いですが、「ベストなバランスをギター毎に探る作業」というのが近いかもしれません。
一番高くなることの多い、リアから順に(リアを基準にして)センター→フロントに向かって調整していくとうまくいくことが多いように感じます。

高すぎてサスティンが悪くなったり、音が悪くなってしまったりした場合、ギターを演奏されている方であればある程度は判断がつくかと思いますので、お好みの高さを見つけてみてください。

パワーが欲しい場合でも少し弦との距離をあければ、キンキンした高域がなくなって意外とミドルが出て上手くいくパターンもありますのでむやみに高くするのはNGです。
「自分でピックアップの高さを調整したけど上手くいかなかった。」とご相談いただいた際に多く見受けられたのはピックアップが高すぎるケースでした。

ポールピースの高さがバラバラ…

シングルコイルピックアップのポールピースを見ていると高さがフラットではないものを見つけることがあります。
フェンダーがギターを製造し始めた頃、エレキ弦もアコースティック弦のように1.2弦がプレーン弦で3~6弦が巻き弦だったので各弦の音量のバランスをとるためにそのように設計されていた経緯があります。
(芯線の太さが音量に影響する、3弦芯線よりも2弦プレーンのほうがこのときは太かった。)
3弦がプレーン弦になってからも、このポールピースの高さのバランスで数々の名演が録音されて聴衆にとっては聴き馴染みのあるものとなったので、バランスの悪さも含めた良さとして、現在まで残っている仕様なのかもしれません。

この場合は1弦側と6弦側だけ高さを確認して後はある程度で割り切る勇気も必要です。

一般的なハムバッカーや、一部シングルコイルなど、それぞれポールピースの高さを調整できる場合はそこも調整すれば音が変わります。
基本はピックアップ本体の高さ調整で調整して、最終的に各弦の音量の微調整のためにポールピースの高さを触るのが良いでしょう。
指板R(指板の曲面、3,4弦の真ん中が山の頂点になるようなアーチ)にも気をつければ良い結果が得られます。

この記事を読んで、弦とポールピースの隙間がほとんどないことに気付いた貴方。お持ちのギターはまだまだ音がよくなるかもしれません。

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