Fender Eric Clapton Stratocasterは一部の商品バリエーションでサウンドが違う!? 

1970年ナッシュビルにある楽器店に入り、6本のヴィンテージ・ストラトキャスターをそれぞれ”一本たった100ドル”で購入
6本のうち3本をジョージ・ハリスン、ピート・タウンゼント、スティーヴ・ウィンウッドに譲り残りの3本を分解して最良のパーツを選び出して組み上げたギター…
エピソードがあまりにも有名で、その愛称も世界中で知られる個体”ブラッキー”

今回は、その50年代製の”ブラッキー”の話ではなく、
1986年当時の最新技術が投入された新しいストラト、クラプトンモデルの”Eric Clapton Stratocaster”についてのお話です。

基本スペックなど

“Eric Clapton Stratocaster”
アルダーボディに、ネックはメイプルの1Pといった材のスペックで22f仕様
指板Rは9.5R

ブリッジが動かないように、スプリングキャビティに木片が挟んであることなどが特徴として挙げられます。

初期型だとLace Sensor ピックアップ、TBXコントロール、ミッドブースト搭載

のちにVintage Noiselessピックアップへの変更などスペックのマイナーチェンジなどもある長年販売されているモデルです。

電装系コントロールがサウンドの肝で、TBXコントロールとミッドブーストによりスイッチ切り替えのような極端なサウンドの切り替えでなく、アンサンブルに馴染んだ繊細な音色や、太くサスティンの長い音色までシームレスにサウンドを変化させることができます。

補足説明

TBXコントロール
センタークリックがあるノブで、センターから絞ればハイカットのような動き、開けば明るさが加わるような動き方をするのがTBXコントロールです。
ポットはスタックタイプのものが使用されており、上段と下段のポットで抵抗値が違うなど、一般的なスタックタイプのポットとは違うもので構成されています。

バッファー回路とミッドブースト回路が分かれており、その境目にボリュームがあるので9Vの電池が切れると音が鳴らなくなってしまいます。

ギターの音は常時アクティブなので、ミッドブーストが0にしてあったとしても入力の段階で音量はわずかに上がっています。

音量が上がる、ブーストで上げる設計なので、ノイズを少なくシングルコイルサウンドが出せるレースセンサーピックアップやノイズレスピックアップが採用されています。

“Eric Clapton Stratocaster”の開発が始まったのは1985年で、最初のプロトタイプが本人の手に渡ったのが1986年5月頃

全曲ブルース・カバーの「From the Cradle」の発表時期
クリーム時代の曲をライブでやることがより多くなった時期

その期間のクラプトンの演奏の多くを担っていたギターといえば凄さが伝わるでしょうか。

ライブアルバムの「24 Nights」に至っては小編成バンド、ブルース・ミュージシャンをゲストに加えた演奏、9人編成バンド、ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団が参加した演奏など多様なアンサンブルをこなしています。
(1990年から1991年にかけて、ロイヤル・アルバート・ホールで行われたライブの音源をまとめたアルバム。)

定番モデルには理由があるといったことかもしれません。。

先日気がついたこと

ここまでは調べればある程度はわかる内容でしたが、つい先日新たに知って驚いたことがあります。

2024年9月30日時点で、当店は2本、Eric Clapton Stratocasterを在庫しています。

実は先日、アンプを同じセッティングで2本弾き比べるという場面に居合わせました。

Fender Custom Shop Master Built Series Eric Clapton Signature Stratocaster Blackie Built by Todd Krause 2014年製
当店管理番号:[WI995]

Fender Custom Shop Eric Clapton Signature Stratocaster 2003年製
当店管理番号:[QK533]

上記の2本をFender Twin Reverbで比較した際に明らかに方向性が違う特徴が出ました。

Todd Krause製造のMBS[WI995]

・ミッドブーストのコントロールである程度歪む
・サウンドはワイドレンジでコンプ感は薄い、鈴鳴り感は[QK533]よりある

2003年製[QK533]

・ミッドブーストはクリーンブースター的なかかり方
・[WI995]に比較するとレンジは狭いがフォーカスされている帯域があり多少コンプレッション感のような圧がある印象で音の太さはこちらに軍配が上がる

単純な優劣ではなく、どちらも抜群に良いギターであるのですが、設計の段階からとも受け取れる方向性の違いが出ました。

「Todd Krause製造のEric Clapton Stratocasterはミッドブースターが違うと聞いたことがある」との情報をその際お聞きしたので実際に調べてみました。

—-現行品の公式ページの掲載スペックは

モデル番号: 0117602858を参照

Vintage Noiselessピックアップ
Master Volume, Master TBX Tone Control,
Master Active Mid Boost (0-25dB). Mid boost kit

—-Todd Krause Masterbuilt商品ページの掲載スペック

モデル番号: 9216080490を参照
Todd Krause Masterbuilt Eric Clapton Stratocaster NOS, Almond Green

Vintage Noiselessピックアップ
Master Volume, Tone
12dB Mid Boost Control

—-

確かに、ミッドブーストが違いました。
そもそもTBXコントロールと通常のトーンといった違いもありそうです。

スペックの表記の都合なのか秘伝なのか、公式サイトの記載ではdB数の違いしかわかりませんでしたが、パーツひとつ違うだけでサウンドの方向性をガラッと変えてしまうのは驚きの体験でした。

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