奥深いフレットの世界 

snsが発達して、「XXが音質に与える影響…」のような系統の記事を見かけるようになりました。
ナットの材質、テールピースの材質、ブリッジの種類、など細かいパーツまで語られています。
細かいパーツのなかでもフレットは特に選択のバリエーションが豊富なパーツなのではないでしょうか。

フレット

そもそもフレットは、目的の音程を出すための区切りとして重要な役割を担っています。

ネックのパーツの一部で指板に打たれており、直接弦と触れる。
音色への影響を謳われるのが確かに納得できるパーツです。

ステンレス素材かニッケル素材かにおおまかに大別され、高さ太さなどサイズにバリエーションと各々の好みが出ます。

どのフレットが良いか?と聞かれると「それぞれの好みです。」という結論なのですが、下調べして特徴を押さえておいて、ギターを購入する前にフレットの素材と形状太いか細いかは把握しておいたほうが良いかもしれません。

太いフレットはベンドやレガートがやりやすいなど、フレットのサイズは奏法上の特徴を言われることが多く、素材は音質面や音の立ち上がりの影響がよく言われます。ステンレスのほうが滑りが良いのでベンドもやりやすいです。

古くからニッケルだったこともあり現在でも主流はニッケル素材です。
ステンレスは立ち上がりが素早く硬い音質で、冷たい音と表現されることがあります。
ステンレスとの対比でニッケル素材は暖かみのある音と表現されることもあります。

フレット自体の硬度があり、加工に手間がかかるので昔はハイエンドなギターでしか見かけなかったのでそこまで一般的なものにならなかったのですが、減りを気にせず演奏できるメンテナンスの手間がかからないことも手伝って、一定数のユーザーを魅了して止まないのがステンレスフレットです。

手間がかかる=良いではないですが、プレイヤーにとってステンレスフレット側の利点が語られていることが多く、プレイヤー側がニッケルフレットを選ぶ理由が音質だけであるかのように錯覚してしまいそうになりますが、ニッケル素材のメリットは音質だけなのでしょうか?

特徴は有利にだけ作用しない

ギター本体の調整を完璧に、オクターブチューニングを念入りに確認しても
ギターの演奏時に狙った音程が出るかどうかは演奏者次第なところがあります。

というのもフレットのついている楽器は押弦の力加減でピッチがうわずりやすく、
撥弦楽器(弦をはじく楽器)はアタックの力加減で音程に揺らぎが出ます。
(強くピッキングするとチューナーの針はピッキングの瞬間、音程がシャープする現象で確認できます。)

押弦の力加減以外にも、弦楽器はベンドで音程をコントロールできます。
和音を美しく響かせるギター演奏者はキーに応じて、アンサンブルを一緒にしている楽器の音を聴いて、押さえている指ごとに押弦の力加減や微弱なベンドで各弦で音程を調節して絶妙に音程をコントロールしています。

ステンレスフレットは確かに滑りがよく単音弾きで半音や1音などはっきり音程を上げるテクニックはやりやすいですが、その滑りの良さから細かい指先のコントロールが繊細で難しく、複数の指でおこなうともなるとさらに難しくなります。
ニッケルフレットのリアクションのほうが和音の響きのコントロールはやりやすい傾向にあるといえるのではないでしょうか。


ステンレスフレットが採用されているラップアラウンドブリッジのレスポールは製品として見かけることはほぼ無い(全く無い?)のはこういった事情からかもしれません。

実際、筆者の私はステンレスフレットが大好き派の人間なのですが、ソロやリードプレイをよくするスタイルであればステンレスフレットが良いし、和音やバッキングはやっぱりニッケルフレットのギターのほうが良いなぁと思う次第です。
もちろん硬い音質では雰囲気が出ないジャンルの音楽ではニッケルフレットの響きを追求したほうが良いと思います。

オールドFenderの細いあのフレットは和音を美しく弾くにはとても理に適っており、その後にロックがギターテクニックに変容を与えて、ギターの演奏のされ方の変化の形跡をフレットに感じる今日この頃です。

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