その時期は”ギターボーカルが持っているギター”のイメージで若い層からの支持を集めている面もありましたが、ギタリスト然としたプレイスタイルを志す方からもお求めいただくことが多かったように感じます。
ギタリスト然としたプレイスタイルとはいってもキース・リチャーズ、ブルース・スプリングスティーン、マイク・ブルームフィールド、ロベン・フォードやアンディ・サマーズへの憧れではなく、当時10代後半から20代前半くらいの学生さんがアベフトシへのリスペクトでテレキャスターを欲しているのを見かけることがあるなど、自分の持っていたテレキャスター観とはジェネレーションギャップを少し感じる”熱”でもありました。
おそらく物心つく頃にリアルタイムではないであろう世代にアベフトシ氏がいかに刺さったかは推測の域を出ませんが、テレキャスタータイプのギター自体の魅力に関してはギタリストであればほぼ全員感じたことがあるのではないでしょうか。
鋭いアタックにエッジの効いたサウンド
無骨なデザイン
頑固一徹、職人気質なイメージのギターのテレキャスターですが、意外にも仕様にバリエーションがあります。
今回は型番やモデルの特徴の紹介ではなく、テレキャスターにまつわる仕様についてです。
好きな仕様の1本をイメージの中で作り上げてみても楽しいのではないでしょうか。
Esquire(1950)
Broadcaster(1950-1951)
Nocaster(1951-)
あたりもテレキャスターとして扱って書いています。
材質や構造
ボディ材はアッシュ、アルダー、バスウッドなどを主に、パイン材がテレキャスターの前身モデルの再現版で復刻がたまにされています。
メイプル1ピースネック、メイプルネックにローズウッドがスラブ貼りかラウンド貼りか。
CBS期は貼りメイプル指板のパターンが出ました。
テレキャスター・シンラインはfホールがボディに空けられており中空構造になっており、そちらにはマホガニーボディのバリエーションがあります。
ボディシェイプは変わらず、しかもボルトオン構造なので、スペックを見て弾き比べることで、指板はメイプル派かローズウッド派か、ボディ材はなにが好きか、好みを判断するのにもってこいなのがテレキャスターというギターなのかもしれません。
すべてローズウッド素材(一部ボディ接着のための材あり)のオールローズテレキャスターなどもありますがそのようなバリエーションモデルが出るあたりもテレキャスターがギターシーンにおいて根強い人気であることが伺えます。
過去の入荷にはFender Custom Shop製でマホガニーのセットネック構造のテレキャスターがあり、驚かされた記憶があります。
ブリッジまわり
サドルは3連サドルが主流ですが、近年は6連サドル仕様で各弦のオクターブチューニングを独立して合わせることができるものを採用したモデルが出ています。
3連サドルも時期によってパターンがあり
・ブラス製のサドル:温かみのあるサウンド
・スティール製のバレル・サドル:やや硬くタイトめ各弦の分離の良いサウンド
・スティール製の溝付きサドル(スレッテッド・サドル、スパイラル・サドル):歯切れよく軽快な音色
・ステンレス製の溝付きサドル:冷たい印象のある鋭いソリッドな音色
サドル上で隣り合った弦との振動の干渉で音色が変わると言われているので3連サドルがテレキャスターっぽさを出すのに必要な要素であるともいえます。
3連サドルは形状にもバリエーションがあり、3,4弦がセパレートされた形や傾斜をつけたり溝切りの位置を工夫することで3連サドルでもオクターブチューニングをすべての弦で合わせることができるものもあります。
ブリッジプレート(アシュトレイプレート)はふちがあることで音色にも影響しますが、ふちなしのものが近年のFenderでも出ています。
電装系
テレキャスター専用の形状のシングルコイル2基が大半ですが、もともと前身のショーモデルのエスクワイヤは1ピックアップです。
キース・リチャーズの改造した個体のようにフロントがハムバッカーのものや、フロントもリアも両方ともハムバッカーのモデルもあり、ここまでの多様性を受け入れるテレキャスターシェイプという器の面白さがあります。
Fenderのワイドレンジハムは少しブライトなFender流のハムバッカーサウンドです。
電装系コントロールにもパターンがあります。
最も認知度が高いのが、カレント配線。
・カレント配線:リアピックアップ単体 – ミックス – フロントピックアップ単体の3wayセレクターに1vol,1tone
Broadcasterのブレンダー配線が採用になったモデルも数は少ないですが近年出ています。
・ブレンダー配線:3-Way Selectorの挙動は、リア+フロント/フロント/フロント(プリセットトーン)、ノブ2つの挙動はボリュームとブレンダー
ハイパスコンデンサの有無は演奏に影響を出す部分です。
1969年のFenderでコントロールポットの数値を1MΩに変更する際に採用になったのがハイパスフィルターで高域の特性を際立たせるためのものでした。
VOLポットの入力部と出力部の端子につけられたコンデンサで、高音の周波数帯のみを通す逃げ道の役割です。
ボリュームを絞った時に高域を残したままヴォリュームが下がって行くコントロールになります。(ボリュームを絞っていくとだんだんキンキンしていきます)
おわりに
もちろんここで挙げきれていない仕様もあります。
純正で3PUのピックアップ配列のテレキャスターのモデルが2機種ほど思い浮かびますし、EMGのハムバッカーが搭載されたアーティストモデルはなんか別物の気がするし…。
テレキャスター選びの際は試奏してみて、なんか良い印象だった個体の仕様をメモしておいて、別個体で良い印象だった個体と共通の仕様を見つけられるとなんとなく仕様と音や演奏性の関連性が見えてくるかもしれません。
お気軽にコメントしてください。