楽器の製品特徴やブランドヒストリーを調べていると、研究されている人や大学の論文に行き当たることがあります。
そんな中でも興味深い論文がこちら。
Gibson vs. Fender: Innovation paths in the early Electric Guitar Industry(ギブソン対フェンダー 初期のエレキギター産業における技術革新の道筋:国際戦略経営学会)
国際戦略経営学会(AIMS)は、1991年、アラン・ノエルによって設立されたフランス語圏の学会とのこと。
記事の内容としては、
~引用訳文
1945年から1984年の間に、2大エレクトリックギターメーカーであるギブソンとフェンダーが選んだ、根本的に異なる2つのイノベーションの道筋を調査。
この期間は、当時ギブソンが独占していた市場にフェンダーが参入した時期であることと、エレクトリック・ギターが誕生したことの両方に相当する。
本稿では、1945年から1958年にかけて、両メーカーが異なるタイプのイノベーションを集中的に行ったことを紹介する。
フェンダーの革新はエンジニアリングとエレクトロニクスに触発されたものであり、ギブソンの革新はクラフトマンシップと伝統に根ざしたものであった。
エレクトリック・ギターとは何かが定義された数年間ともいえる。
その後、両社とも技術革新の行き詰まりの時期(1958年~1984年)を迎えます。
本稿では、その原因が革新的な活動の欠如ではなく、消費者ニーズに対する誤解の拡大や、互いの市場シェアを奪い合う不毛な試みにあったことを実証している。
引用ここまで~
ということです。
いかにも戦略経営を研究している方々らしい目線。
詳しい内容は記事に任せておいて…
記事の中では、今では大成功を収めているモデルが実は当時はさんざんだった(経営的な観点で)」という事実も書かれています。
今回は、開発当時は「失敗作」とされ製造中止になったり、悲しくも一笑にされたモデル達をご紹介。
Gibson レスポール
1946年、当時有名なギタリストであるレス・ポールが、ギブソン本社を訪れ、自作したソリッドボディ・ギターのプロトタイプを披露。
ギブソンの幹部は彼を笑い、問題にしないかった。
1952年発売されるも1960年には製造中止。
Fender テレキャスター(ブロードキャスター)
開発当時、他のギターとは根本的に異なる外観を持っており、当初は「カヌー・パドル」や「スノーシャベル」という嘲笑的な愛称で呼ばれていた。
Gibson エクスプローラーとフライングV
1958年、ギブソンは変わったシェイプのモデルを発表することで、フェンダーの顧客の中心であった若い人々を引き付けようとした。
しかしこの2つのモデルは、生産開始からわずか1年で生産中止。
Gibsonファイヤーバード
1963年発表のモデルだが、1969年までにすべてが生産中止。
今や定番であり各ブランドの象徴ともいえるレスポールやテレキャスターまでもが、当時は「アレはないでしょ(笑)」と言われていた事実。
その後は皆さんご存じのとおり、人気が出て再生産されています。
しかし、この記事の著者によると「そのほとんどは偶発的なヒットである」とのこと(厳しい)。
両社とも、ギター/ベースを弾く者にとっては無くてはならない存在。
事実はどうあれ、偶発的なヒットも製品がなければ叶いません。
偶発的ヒットも、熟練の技術者の知恵を結集させ、失敗しながらも何度も開発の挑戦をしてきた努力の証ともいえるのではないでしょうか。
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