ネックポケット/ネックヒールが教えてくれること 

湿度が高くなり、ネック調整等のメンテナンスで店頭にギターをお持ちいただくことが多くなってきました。
ストラトキャスター等のボルトオンのギターはトラスロッドの調整のためにネックを外さないといけないモデルが多いので、よくメンテナンスをお受けします。
よくよく考えると、ギターのネックを外すって、こういう仕事でなければなかなかしないことですよね。

ネックを外す。
実は買取の際にも重要な手順なので、”ネックポケット/ネックヒールが教えてくれること”をさらっと書いてみました。

ネックポケット/ネックヒールでなにがわかるのか

認定証や新品購入時の保証書とシリアルが一致すればモデル名の特定は大きく前進するのですが、中古品という性質上、認定証や新品購入時の保証書が欠品しているケースがございます。
こういう場合にボルトオンのギターはネックポケット/ネックヒールを確認すれば解決することが多くあります。
(※買取の概算の価格を出す時点でネックを外す場合は、お客様のご了承を得てから行うことを徹底しております。)

そもそも、ネックを外すのは、トラスロッドの残り、締まり具合を確認するのが大きな理由なのですが、前述した通り、モデル名の特定にも影響する、またはそれ以上の情報を持っているのがネックポケット/ネックヒールです。

確認したかったモデル名の記載がないことももちろんあります。
しかし、製造年が記載されている、ボディの木目の見えない塗装であればボディ材がわかる。何年仕様のモデルかが記載されている数字でわかる。
また、塗料の付き方の位置がボディ側とネック側で綺麗に一致するかも確認できるので、ネックが付け替えられていないかの判断のひとつにもなります。

ビルダーの名前が入っている。ボディカラーの名前。レリックの程度。も明記されているケースがあります。

※お持ちのギターのネックポケット/ネックヒールが気になられた方もおられるとは思いますが、ネックの外し方を間違えると修理しないといけない状態になったりもしかねないのでお近くの楽器店にご相談ください。

ネックポケット/ネックヒールで知ったこと

今はインターネットが発達して、検索すれば情報が出てくる内容も多くはなってきていますが、そもそも言葉を知らなければ検索が出来ない。知っている知識から逸脱するのが難しい面があります。

私は、ネックを外し続ける中で、ある人物を知り感銘を受けました。
それが、H. Gastelum(ハービー・ガステラム)氏です。

きっとフェンダーのギターがお好きな方はご存知でしょう。

1961年からフェンダーのフラートン工場の磨き・つや出し(Buff and Polish)部門に所属。
その後、メタルショップを経てネック部門へ転属。そこで天職を得た彼は、40年間ネック一筋。
計56年間フェンダーでキャリアを過ごしたフェンダーの歴史に名を残す人物です。
フェンダーでの後半の時期をCustom Shopで過ごしました。

「ネック作りはすべてハービーから学びました」とジョン・クルーズがフェンダーニュースで語っている通り
Custom Shopマスタービルダーの弟子たちを育て上げたのも彼の仕事です。

このような輝かしい経歴の人物がフェンダーに入社したキッカケが”当時付き合っていた恋人の紹介で入社”というのがドラマがあっていいと感じました。
H. Gastelum氏本人の弁を一部抜粋すると「彼女の姉妹が50年代にフェンダーで働いたことがあり、私にフェンダーで働く気はないか、と聞いてきたのです。それをきっかけに私は職を得たのです。」とあり、人それぞれの人生にターニングポイントがあることを感じさせられました。
一人の職人の人生の一部に触れたような瞬間でした。

#FenderNews の記事の中に彼が語った言葉や周辺の人物のコメントも掲載されているので興味を持たれた方はぜひ探してみてください。

この記事でネックポケット/ネックヒールに興味を持っていただけたら嬉しいです。
カスタムショップではないUSA製のモデルでH. Gastelumのスタンプがネックヒールにある個体が写真つきでブログに載っていたりもするので、あなたがお持ちのFender USAももしかしたらスタンプがあるかもしれませんね。

コメント

  1. 匿名 より:

    うちの75~76のテレキャスターにもGastelum氏のスタンプが有りました。

    • Qsic より:

      コメントありがとうございます。
      FenderNewsには”彼(Gastelum氏)の仕事はジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、リッチー・ブラックモアなどアイコン的なアーティストたちのキャリアを支えてきました。”とあります。
      レジェンドの使っていたギターのネックと同じフィーリングかもしれないと思うとなんだか嬉しくなりますね!

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