「半音下げのほうがコードの響きが…(うんたらかんたら)」–ありがちなセリフの真実 

私はギターを始めてからは運指練習の毎日、動画サイトも黎明期だったので、はやいうちからイングウェイのフレーズのコピーを始めました。
そこでレギュラーチューニング以外のチューニング(半音下げ)を知り
その時は「チューニング下げたほうがヘヴィ」「ヴィブラードがかけやすい」のような情報をどこかで聞いていたので
“テクニカル至上主義、速いのが正義、慟哭のメロディーとリフ、巧みな楽曲展開、”に思考を支配されていた鋼鉄脳の私は「そういうものなんだー」としか思っていませんでしたが

そのうちに、メタルとは無縁そうなサウンドの日本のバンドが半音下げチューニングでコードを鳴らしているのに気が付きました。
ヘヴィとかリードで泣きのヴィブラートとかとは違った風合いのバンドでした。
(オルタナ、Jロック、ロキノンにジャンル分けされるようなバンドだった記憶があります。)

そもそもこのメタルと日本の歌がメインのバンドのギターのチューニングの不思議な一致や、半音下げを取り入れてサウンドを作っているバンドがいることに気がついたきっかけなのですが

高校時代に楽器をやっている連中で一緒にスタジオに入ろうとなったときに、各パートも練習を初めたばかりの層が多くメタルなど出来るはずもなく
流行っているバンドで”なるべくビギナーでも弾きやすいもの”をコピーしていた経験からです。
(開放弦が明らかに低かったので気が付きましたが…)

半音下げのチューニングのバンドはコード進行を耳コピしづらかった

当時の私はレギュラーチューニングで音の位置とスケールを覚えていた最中だったのでチューニングを下げる気にはなれず半音下げのバンドの曲を聴きながら耳コピでレギュラーチューニングのギターでコード進行を拾っていました。

「耳コピでコード進行を拾いにくい」場面が多かったのが半音下げで和音を弾いているバンドでした。

コード進行を検索すれば「大したことないじゃん!」というような知っているコード進行だったのに「なにか魔法でもかかって特別に聴こえる」ギターサウンドになっていたのを覚えています。

それはなんでだったのか、最近になって「半音下げのほうがコードの響きが…(うんたらかんたら)」
ようやくその尻尾を掴んだような気がします。

 

ネタバラシをすると、C.D.E.F.G.A.Bなんて音の名前は真実から目を逸らすまやかしだったからです 

なぜまやかしなのか
(簡単に解説するので以下は厳密に正しいことからは外れる部分もあるかと思いますので興味を持たれた方は専門資料などをご自身で探されるのをおすすめします。)

一般的なギタリストが今、チューニングをするとしたら今はチューナーを使うかと思います。
音叉で5弦をAに合わせてというのが一昔前のギターのチューニングでしょうか
あなたのチューナー、もしかしてA=440Hzって設定をA=442HzやA=439Hzに変えられませんか?

そして、あなたのチューナーはその誤差をセントで表していませんか?

・セント(cent)とは
平均律の半音を100段階に分けたその1単位のこと。したがって半音は100セント

・ヘルツ(Hz)とは
ここでは音の周波数の単位のこと.1秒間に振動する回数の値で表す。

2つの独自の単位をつかって話をする。「人を欺くにはもってこい」の構図です。

 

話を半音下げチューニングは何故響きが違うのかに戻します。

(計算している単位は全てヘルツ(Hz)で話をすすめます。割り切れない数など細かい数はほどよいところで切ります。)

チューナーの設定は(A=440Hz)とします。

 

5弦、開放弦A (440Hz)とした時にオクターブ上は(880Hz)

半音下げチューニングの時の5弦開放弦Aフラット(415.305Hz)、オクターブ上は(830.610Hz)

ギターは12フレットで開放のオクターブ上になるのですが、その中間も押さえて演奏するので細かいところまで見てみましょう。半音ずつあがっていき12でオクターブ上にいきます。
まずは1フレットずつどれだけHzは上がっていくのか…。

1.レギュラーチューニングの場合
オクターブ上から開放弦までは880ー440=440 これを12で割ります。
440÷12=36.6666…
1フレット上がるごとに36.6666…ヘルツくらいずつ上がっていきます。

2.半音下げの場合
オクターブ上から開放弦までは830.610ー415.305=415.305 これを12で割ります。
415.305÷12=34.60875

1フレット上がるごとに34.60875 ヘルツくらいずつ上がっていきます。

 

1フレットごとに上がっていくヘルツが全然違いますね。
ここが半音下げのギターのコードの響きが特別で雰囲気が多少違った要因ではないかと推測されます。

ヘルツで見たら厳密には違うのに、音の名前は同じという現象が起こっている。
「鳴っている音はレギュラーチューニングと半音下げチューニングでは微妙に違う。」
和音になれば違う部分が単音よりたくさん出てくるというわけです。

 

そもそも押さえる力加減でピッチのブレる、ギターという楽器でこんな話をするのはナンセンスなんですけどね。
という締め方で締めたいと思います。

 

もっとディープに

いままでの話は12平均律の中での話でした。

2つの音を鳴らした時に周波数(Hz)が整数比率になるように音階を作った純正律というものが存在します。
綺麗な和音について研究したいという方はそちらの情報にアクセスされてみてはいかがでしょうか。

Iphoneのアプリで純正律の音階のコードを鳴らしてくれる無料アプリもあるので実際に音を鳴らしてみるのもいいかもしれません。
「基準となる音や概念が違うと響きはこうも変わるのか」というのが実感できるかと存じます。

ここまでの話で細かな数字が色々出てきましたが、それは体感できるレベルで実際に音に違いを生んでいるのです。

コメント

  1. レギュラーチューニング派 より:

    はじめまして。
    早速ですが 半音下げのFとレギュラーチューニングのEは 響きが違いますか❓
    同じように 半音下げのF#とレギュラーチューニングのFはどうですか?
    私には 同じにしか 聞こえませんが、、。

    • Qsic より:

      コメントをいただいている内容からはコードを鳴らすポジションやフォームがわからないので推測、仮定してのお返事になりますが、半音下げのF(実音はE)とレギュラーチューニングのEですとローポジションでは開放弦を使っている使っていないの違いがあるのでそれだけでも響きに違いがあると思います。
      半音下げのF#とレギュラーチューニングのF
      ローポジション以外、開放弦を使わないポジションでのお話ですと、押弦する位置によってたかが1fの差といえども楽器自体の振動の発生位置も変わり弦のテンション感にも影響があります。
      チューニング自体とは話はそれますが、弦のゲージを変更した際にサウンドが変わることも一般的に言われておりますので、弦のテンション感が変わったり押弦の位置(ポジション)が変わるというのは変化させる前と全く同じようにはいかないのではないでしょうか
      半音下げで伴奏を録音してレギュラーチューニングでそこに重ねて弾いてみると実感できるかもしれません。

  2. レギュラーチューニング派 より:

    いろいろとありがとうございます。
    弾いてる本人の気分的なものなのかなとも思いますが。
    クリーントーン、クランチ、オーバードライブ で
    第三者にブラインドテストしても 違いが わかるものなんでしょうか❓

    • Qsic より:

      歪みの乗り方が変わるので歪ませたほうがわかりやすいと思います。
      クリーンにも音質の変化はございます。

      ジミ・ヘンドリックスがギターのチューニングを下げたのは自分の声のキーに合わせる目的以外にも諸説語られておりますので調べると興味深いかと存じます。
      主観ではございますが、ジミヘンの楽曲が残されてるテイクごとにアンサンブルのサウンドが違うのは音程が違うからだけで片付けられないものがあると考えています。

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