今や世界中に愛好家が存在するIbanez TS9。TS系というジャンルを確立し、今でもインスパイアされたモデルが次々と発売されるほど、エフェクター界に絶大な影響を及ぼした名機です。そのTS9と一緒の見た目をしたペダルがあります。それがMaxon OD9。「違うブランドなのに見た目一緒でいいの?」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。
実はこの2台、関係が深い間柄なんです。
OD9とTS9の成り立ち
実はTS9、当初OD9のOEM製品として誕生しました。OEMとは「製造メーカーが他社ブランドの製品を製造すること」で、1960年~70年代当時から他メーカーのOEMをおこなっていたMaxonと積極的に海外へ展開していたIbanez(星野楽器)がタッグを組み、Maxonの技術で海外展開用のIbanez製エフェクターを製作することになります。まずはOD808のOEMとしてTS808が発売。スティーヴィー・レイヴォーン氏やゲイリー・ムーア氏が愛用し、一気に高い評価を得て、TS9やTS10といったチューブースクリーマーシリーズでその地位を確固たるものにしたのでした。TS9とOD9は兄弟というか、家族のような関係性だったんですね。
「じゃあブランド名が違うだけで中身は一緒なのか・・・」と思ったそこのあなた。この2台を実際に比べてみると意外に面白い違いがあるんです。
①LEDの明るさ
2台をONにしてみると、OD9はくっきり赤く光って見えますが、TS9は正直見えづらいです。角度によって見えやすくはなりますが、テーブルに置いて手元でコントロールする際は、角度的にON/OFFがかなり分かりづらくなってしまいます。LEDを交換するという人も多いようですね。世界的ロングセラーモデルなので改善されても良さそうですが・・・「無闇にON/OFFを切り替えるな。常時ONにしておけ」という男気仕様なのでしょうか。
②バイパス方式
OD9はトゥルーバイパス仕様、TS9はバッファードバイパス仕様となっています。バッファードはOFFの時も回路を通って音が変わってしまうため、トゥルーバイパスを好む方は多いと思いますが、そこも含めてTS9の味になっていると思うので、正直甲乙は付け難いところです。
③サウンド
まずは全て12時の設定にしてみると、そこまで大きな違いはありませんが、OD9は中低音域が太くまろやかな印象、TS9は低域が少し削れて中音域がより持ち上がった印象でした。ただ、DRIVEとTONEを上げることでかなり個性がはっきりしてきます。
OD9はソフトなオーバードライブであることは変わりませんが、ゲイン幅は若干広く、やや荒いドライブも表現できます。TONEの効きが特徴的で、フルテンまで上げると、高音域を中心に全体的に持ち上がり、音抜けが向上しつつパワーが増すといった印象を受けました。低音域は割と残ったままなので、ハムバッカーよりシングルコイルの方が相性が良いと感じました。学生時代、レスポールでOD9を使用していましたが、「なんか上手く抜けへんな・・・」と思っていたので合点がいきました。ボトムがしっかりしている分、単音を弾くリードギターにマッチするのではないでしょうか。
TS9はDRIVEをフルにしても大きく変わることはありません。本当にソフトに歪んでくれる印象です。TONEについては、低音域が少し削れて、中高音域が持ち上がるので、よりキュッと締まったサウンドになる印象でした。TS9らしいコシや艶やかさは、ここの絶妙なバランスで成り立っていると感じます。OD9を弾いた後だと、少し低音域が物足りない気がしますが、変化幅にも若干癖がある分、TS9はナチュラルに音色が変化してくれるので、どんな楽器でも合わせやすいと思います。ブースターとして世界的に高い評価を得ているのも納得です。
あなたはどっち派?
ルックスやサウンドの核は同じですが、細かくコントロールしていくほど、それぞれの味が感じられるTS9とOD9。基本的に優等生ながら、ちゃんとこだわりもあるのは日本製の良いところだなと思います。
皆様はOD9派でしょうか?TS9派でしょうか?「自分はこっちをこんな使い方してるよー」などあれば、ぜひ教えていただければ幸いです。(どちらが良いか決めようぜ!という話ではないので悪しからず)
お気軽にコメントしてください。