翻弄された不遇なモデル 

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かれこれ1年ほど当店に在庫としてあるのですが、とんでも仕様なキャビネットがございます。
色々と訳があって長い間倉庫にしまわれていたのですが、最近店頭に展示できるようになった逸品でございます。

それは・・・

「PEAVEY / 412TVX」

というベースアンプ用キャビネットでございます。

【ベース用キャビネットの何が珍しいの?】

と思われるかと存じますが、仕様を見ていただけるとベーシストの方は納得いただけるのではないでしょうか。

《仕様》
サイズ:約 W724 × H965 × D489 (mm)
重量:約 49.0kg
IMPEDANCE:4Ω
MAX POWER:900W
SPEAKERS:12inc ×4

というモデルでございまして、「とにかくデカイ」のでございます!!

サイズ、重量も大きいのですが、何よりも特筆すべきはスピーカーです。

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ここ数年のベース用キャビネットの仕様を見ますと、
「10インチ4発」
が主流となっているかと思われます。
また、大口径となりますと、15インチ1発や15インチ2発といったモデルも見られます。

12インチの口径が4発、ギターではある種スタンダードな仕様かと思いますが、意外とベースでは珍しい仕様でございます。

スピーカーのサイズと数ですが、一般的に大口径は低音を無理なく出すのに適していると言われております。
スピーカーの数は音圧を出すのに一役買うといわれております。

低音と音圧のバランスで、10インチ×4が採用されていることが多いわけですが、それをサイズアップするという事は単純に「よりロー」が出て迫力のあるサウンドをアウトプット出来ることを想定しているということでしょうか。

重量の問題などから最近ではこのサイズのモデルはほぼ製造されていないので、実物を目の当たりにするとかなりの迫力に衝撃を受けます。

少なくとも現行のモデルではないので、製造年について調べてみました。

正式な年式に関しては特定できなかったのですが・・・、仕様やその前後の発売商品を見るとおそらく1990年代半ばごろのモデルではないかと推測しております。

90年代半ばを今振り返りますと、90年代初頭にNirvanaを代表とするグランジ・バンドの台頭があり、ハードロック・ヘヴィメタルが旧時代の産物とされていった時代といえるかと思います。

サウンド面でも、より大きな会場を埋めキャビネットで壁を作り、大音量で演奏するという従来のやり方から、よりミニマムなセットへと流行が流れていた時期でしょうか。

だからこそ、1台で完結出来るように大きなキャビネットを製作したのか、まだまだ80年代ロックのようなサウンドが流行るようにという想いで製作したのかはメーカーに聞かないと分かりませんが・・・。

客観的に「PEAVEY / 412TVX」を評価すると、流行の間にハマってしまった不運なモデルだったのではないかと思います。

個人的な見解でもありますが、80年代末ごろから90年初頭にかけて、ハードロック・ヘヴィメタル冬の時代だったと記憶しております。
(名盤が無いといった意味ではなく、世間的な評価、特に音楽ファン以外の人からの評価が・・・笑)

その後、95年以降から徐々に重鎮バンドたちがリリースと共に来日公演したり、重要なミクスチャーロックバンド達が次々と台頭し、1999年のslipknotの出現でヘヴィミュージックの復権が決定的になった訳ですが、このキャビネットがその当時に脚光を浴びることはなかったように記憶しております。

仕様を考えますと、2000年代に発表していれば今と違った評価を受けたモデルなのではないかと思ってしまいます。

そして、現在2019年。
「このサイズのスピーカーは通常の荷物では配送が受け付けてもらいない」

という、またしても不遇な扱いとなってしまっているのはなんという巡り合わせなのでしょうか。

なんとも因果なモデルなのですが、これだけの仕様は唯一無二ですので興味のある方は一度体感して欲しいと思っております。

店頭に展示しておりますので、立ち寄った際にはチェックしていただけると幸いです。

アンプ・ドラム担当:土内

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