PRS大躍進の契機となった1本 “Golden Eagle” 

Howard Leese “Golden Eagle”が残した遺産と、Private Stock Replicaの価値

PRSの歴史を語るうえで欠かせないモデルは数多く存在します。

Custom、Santana、Dragon──。

いずれもブランドを象徴する名機ですが、その源流をたどっていくと、一人のギタリストと一本の特別なギターに行き着きます。

Heartのギタリストとして知られるHoward Leese氏。

そして彼が長年愛用した伝説的なPRS、“Golden Eagle”。

今回ご紹介する Paul Reed Smith Private Stock #2204 Howard Leese Replica VINTAGE YELLOW は、その歴史的個体をPRS Private Stockが2009年に100本限定で復刻した特別なモデルです。

本機の価値は、希少性や豪華な仕様だけでは語れません。

Golden Eagleは、現在のPRSを象徴するメイプルトップの美学、Pre-Factory期の手工的な設計思想、そして後のSantanaモデルへとつながる系譜を内包した、PRS創成期を物語る一本だからです。

PRSがまだ「代表的ギターブランド」ではなかった時代

現在のPRS Guitarsは、世界中のプロミュージシャンに愛用されるトップブランドとして知られています。

しかし1970年代後半から1980年代初頭にかけてのPaul Reed Smithは、まだ工場を持たない若きギタービルダーでした。

自ら製作したギターをミュージシャンへ直接紹介し、一本一本を少量製作していた時代。

現在ではPre-Factory Eraと呼ばれるこの時期に、後のPRSへとつながる数々のアイデアが生まれていきました。

Howard Leese氏がPaul Reed Smithのギターと出会ったのも、まさにこの時代です。

Howard Leeseという存在

Howard Leese氏は、1970年代から1990年代にかけてHeartのサウンドを支えたギタリストです。

「Barracuda」「Crazy on You」「Magic Man」などで知られるHeartは、70年代から80年代にかけて大きな成功を収めたロックバンドであり、Leese氏はそのサウンドの中核を担いました。

Vintage Guitar誌のインタビューで、Leese氏は自身の使用楽器について、335、Telecasterを経て、1980年にPRS Golden Eagleを手にしたと語っています。

さらに同インタビューでは、80年代Heartのギターサウンドについて、Golden EagleとSoldanoアンプの組み合わせが大きな役割を果たしたことにも触れています。

Heartの大きなステージやレコーディングの現場で使われ、Howard Leese氏のキャリアを支えた実戦的なメインギターでありました。

ポラロイド一枚が生んだ運命的な出会い

別のオーナーのために作られたが商談が流れたなどのエピソードもありますが
Golden Eagleにまつわる逸話の中でも印象的なのが、Howard Leese氏が実機を見ずに購入を決めたというエピソードです。

Leese氏は後年のインタビューで、Paul Reed Smithから届けられたポラロイド写真を見て、そのトップの杢目に強く惹かれたと語っています。

まだPRSというブランドが確立される前の時代に、写真一枚で購入を決断したという事実は、このギターが放っていた特別な存在感を物語っています。

そして実際にギターが届くと、その期待は裏切られませんでした。

Leese氏はGolden Eagleを自身のナンバーワンとして使用し、さらにバックアップ用としてGolden Eagle IIを注文します。

この流れは、Howard Leese氏がPaul Reed Smithという若きビルダーの腕に信頼を寄せたことを示しています。

Golden Eagle誕生

Golden Eagleが特別視される理由は、Howard Leese氏の愛機だったからだけではありません。

このギターは、Paul Reed Smithが製作した最初のメイプルトップ・ギターとして知られています。

現在のPRSといえば、美しいフレイムメイプルやキルトメイプルを用いたトップが象徴的です。

しかし、その出発点は最初から確立されたブランド戦略ではありませんでした。

Golden Eagleのトップ材は、家具に使われていた古いメイプル材。
友人の母親が持っていたタンスの引き出しのCurly Mapleだったと言われています。

Paul Reed Smithは、その美しい杢目に可能性を見出し、ギターのトップ材として使用しました。

この発想こそが、後のPRSを象徴する「美しいメイプルトップ」の原点のひとつとなったのです。

引き出し材の痕跡まで再現した理由

Golden Eagleの逸話のひとつが、トップ材に残された家具由来の痕跡です。

前述の通り元の材はタンスの引き出しに使われていたため、取っ手を取り付けていた穴が残っていました。

通常であれば欠点と見なされる部分です。

しかしPaul Reed Smithは、その穴を埋めながらギターへと仕立てました。

そして2009年に製作されたHoward Leese Golden Eagle Limitedでは、その「埋められた穴」まで再現されています。

これは単なる遊び心ではありません。

PRSにとってその痕跡は、ブランドの原点を示す歴史的ディテールだったのでしょう。

レプリカの再現度はとことんまで高める。オリジナルに刻まれていた物語まで再現する。

Private StockによるHoward Leese Replicaは姿勢において妥協のない特別なモデルです。

実はSantanaモデルの祖先だった

Golden Eagleの重要性は、Howard Leese氏の愛機だったという点だけに留まりません。

このギターは、後にPRSを象徴する存在となるSantanaモデルの系譜にも深く関わっています。

Carlos Santanaは、Howard Leese氏が所有していたGolden Eagle IIを借りてレコーディングを行ったとされています。

その体験をきっかけに、SantanaはPaul Reed Smithへ自身のためのギター製作を依頼します。

そしてそのベースとなったのが、Golden Eagleの設計思想でした。

つまり系譜としては、

Golden Eagle

Santana Prototype

Santana Model

現代PRS

という流れが見えてきます。

これは非常に重要です。

現在PRSを代表するモデルのひとつであるSantanaモデルも、源流をたどればHoward Leese氏のGolden Eagleへとつながっていくのです。

Golden Eagleは単なるPre-Factory期の珍しい個体ではありません。

Howard Leese氏のメインギターであり、Santanaモデル誕生のきっかけとなり、さらには現在のPRSへと続くデザイン思想の源流でもありました。

だからこそ、このHoward Leese Replicaは単なるアーティストモデルではなく、PRSの歴史を語るうえで欠かせないヒストリカルモデルなのです。

Paul Reed Smithが今も忘れない一本

Golden Eagleが単なる過去の名器で終わっていないことは、後年のPRSの動きからも分かります。

2009年、PRSはHoward Leese氏のGolden EagleをPrivate Stockで100本限定復刻した後も
2015年、PRS Private Stock 20周年記念モデルの開発においても、Golden Eagleは設計上のリファレンスとして再び取り上げられています。

PRS公式発表では、この20周年モデルがHoward Leese氏のGolden Eagleを想起させる設計であり、Paul Reed Smith本人が全体設計に大きく関わったことが示されています。

Golden Eagleは単なる懐古的な個体ではなく、PRS自身が後年になっても参照する設計思想の源流だったのです。

100本限定で蘇った伝説

2009年、PRSはHoward Leese Golden EagleをPrivate Stockによって100本限定で復刻しました。

その仕様は、オリジナル個体への敬意に満ちています。

East Coast Curly Mapleトップ。

Mahoganyバック。

24フレット、24.5インチスケール、11.5ラディアスのハカランダ指板。

Pre-Factory Santanaヘッドストック形状。

メッキ加工されていないPRSトレモロ。

Vintage Yellow / Amberのハイグロス・ニトロラッカー・フィニッシュ。

Golden Eagleピックアップ。

そしてオリジナル同様に再現された、家具由来の埋め穴。

さらにはHoward Leese氏のケースを再現したグリーンのフライトケースまで用意されました。

ここまで徹底していることからも、このモデルが単なるアーティストモデルではなく、PRS史における重要個体の保存・再現を目的としたプロジェクトだったことが分かります。

Private Stock #2204が持つ価値

世の中には数多くの高級PRSが存在します。

美しい木材を使用したPrivate Stockも珍しくありません。

しかしHoward Leese Golden Eagle Replicaが特別なのは、スペックだけでは測れない背景を持っていることです。

この一本には、

Paul Reed Smith最初期の挑戦。

Howard Leese氏との出会い。

Heartの80年代サウンドを支えた歴史的な個体へのリスペクト。

Santanaモデルへとつながる初期PRSの設計思想。

そして現代PRSにも受け継がれるメイプルトップの美学。

それらが1本に集約されています。

今回入荷したPrivate Stock #2204は、PRSというブランドがどこから来て、どのように現在の姿へ発展していったのかを物語る、極めて資料性の高いヒストリカルモデルです。

まとめ

Paul Reed Smithというビルダーにとっても記念碑的な個体であり、Howard Leeseというプロミュージシャンとの信頼関係を示したアイコンであり、後のPRSデザインへとつながる原点でした。

現在、私たちがPRSに対して抱くイメージ──美しいメイプルトップ、優れた演奏性、工芸品のような完成度──その源流のひとつに、このGolden Eagleがあります。

Paul Reed Smith Private Stock #2204 Howard Leese Replica VINTAGE YELLOW。

高額で綺麗なギターという認識では浅く、PRS創成期の物語を現代へ繋げたギターを高い水準で再現したプロジェクトです。

所有するということは、PRSの歴史を知りそれにまつわる”熱”を感じるということ。

このモデルが特別であり続ける理由は、まさにそこにあります。

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