Gibson Custom Shop True Historic 1959 Les Paul Tom Murphy Painted & Aged “A Murphy Masterpiece” 2017年製

Gibson Custom Shopの中でも、特別な響きを持つ名前があります。
Tom Murphy Painted & Aged。
そして今回ご紹介する一本には、さらにその先の言葉が添えられています。
“A Murphy Masterpiece”
単に「Tom Murphyがエイジングを施したレスポール」というだけでは、このモデルの本質は伝わりません。
このモデルは、Tom Murphy氏が考える理想のサンバースト・レスポール像を、Gibson Custom Shopがひとつの完成形として製品化した、極めて特別な限定企画です。
Gibson公式の資料でも、本モデルは「A Murphy Masterpiece」と明記され、Tom Murphy氏の“perfect Les Paul Standard”を最初から最後まで具現化したリミテッド・ランとして紹介されています。さらに、ハンドピックされた材、立体的なMurphy Sunburst、徹底したMurphy aging、専用のHistoric Serial Number Sequenceが特徴として挙げられています。
Tom Murphyの“作品”としてのLes Paul

Tom Murphy氏は、Gibson Custom Shopにおけるヒストリック・レスポールの初代ペインター、そしてエイジングのパイオニア、ヴィンテージ・エキスパートとして紹介される人物です。
1959 Les Paul Reissueの歴史を語るうえで、彼の存在は欠かせません。
当店の解説記事でも、Tom Murphy氏が1959レスポールのリイシュー・プロジェクトに関わり、ヴィンテージ・サンバーストの復刻に大きく関与した流れを紹介しております。
さらに、エイジド・ギターという文脈においても、彼は単なる加工担当者ではありません。
1999年に発表されたGibson初のエイジド・ギター「40th Anniversary 1959 Les Paul Reissue Aged」以降、2005年頃までの多くのエイジド・モデルをTom Murphy氏が仕上げていたこと、またDickey Betts、Gary Rossington、Duane Allman、Jimmy Pageなど、アーティスト・モデルにも関わっていたことが知られています。
つまり、Tom Murphyという名前は、単なる“エイジングの上手い職人”ではなく、
Gibson Historic Les Paulの価値観そのものを形づくってきた人物の名前でもあります。

このモデルが特別な理由
本モデルの重要なポイントは、Tom Murphy氏の関与が「塗装とエイジング」だけに留まっていないことです。
Gibson公式アーカイブでは、本モデルについて、Tom Murphy氏がヴィンテージ・ルックスという視点で選定したメイプルトップ、サウンド面でこだわったミディアム・ウェイトのマホガニーバック、ダイナミックなアーチを描くMurphy Top Carve、Murphy Burst & Agedを備えたモデルとして説明されています。
さらに、専用シリアル・ナンバー、ペインテッド・メタル・ジャックプレート、エイジド・ブラス・サドルなど、細部に至るまでTom Murphy氏の理想を落とし込んだ仕様であることも明記されています。
ここが、通常のMurphy Agedモデルとの大きな違いです。
既存のレスポールにMurphy Agedを施したモデルではなく、
Tom Murphy氏が考える“理想のBurst”を、材、形状、色、質感、演奏性まで含めて製品化したモデル。
それが“A Murphy Masterpiece”です。


True Historicを超えて意識された、Murphy Top Carve
このモデルを語るうえで外せないのが、トップ・カーヴィングです。
フラッグシップであるTrue Historicと比べても高低差のある、グラマラスな曲線。
光の反射によって美しいボディラインが浮き彫りとなります。
Les Paulのトップは単なる曲面ではありません。
光の当たり方、杢の浮き方、バーストの見え方、そして抱えたときの存在感まで左右する、レスポールという楽器の“顔”とも言える部分です。

“A Murphy Masterpiece”では、そのトップカーブがTom Murphy氏の監修によって設計されている点に大きな意味があります。

正面から見た美しさだけではなく、斜めから眺めたときの陰影。
アーチに沿って沈み込むバースト。
照明の角度によって浮かび上がるボディの起伏。
まさに、写真一枚では伝えきれない魅力です。
Murphy Sunburstという色
本モデルのカラーは、Murphy Sunburst。
Gibson公式の仕様にも、フィニッシュはMurphy Sunburstと記載されています。
このバーストは、フレイムを派手に見せるためのものではありません。
経年変化で木地に浸透した塗装成分によるフィギュアの陰影、複数の色味が重なり合うサンバーストのカラー層、アメ色に焼けたトップのクリア層などを、塗装のステップごとに分析して作り上げられたもの。
幾重にもレイヤーが重ねられたデザインを立体で、しかも木材に施しています。
Tom Murphy氏がヴィンテージのバーストをどういうふうに視認し、解釈していた(視えていた)のか。
その審美眼が体感できるカラーリングとなっております。

Painted & Aged。傷ではなく、時間を描く業
“誰がエイジドしたか”
“どのようなエイジドか”
Murphy Agedの魅力はマーフィ氏の技術やブランディングによるもののみで語るには浅く
「どこに傷があるか」ではなく、
「なぜそこにその傷や経年があるのか」に要があります。
Tom Murphy氏のエイジングは、偶然ついた傷を修復する技術を逆方向に応用するところから発展したもので
トレードショーで、傷を直す工程を逆にできないかと問われたことが、エイジド表現の出発点として語られています。
だからこそ、Murphy Agedには不自然な“加工感”ではなく、
本当に使われてきた楽器のような説得力があります。
ラッカーのチェック。
ハードウェアのくすみ。
トップの曇り。
金属パーツの酸化感。
外観や手触りその楽器の音色など五感の刺激ももちろんですが、
それを超えた第六感、触れたときのフィーリングに特別なものがございます。



“A Murphy Masterpiece”におけるエイジングは、単なる外観演出ではなく、Tom Murphy氏が理想とするヴィンテージ体験の一部です。
Murphy Medium C-Shape 特別なネックグリップ
本モデルのネックは、Murphy Medium C-Shape。
Gibson公式アーカイブでも、ネックプロファイルはMurphy Medium C-Shapeと記載されています。
ReissueのLes Paulというと、太く堂々としたグリップを想像される方も多いと思います。
しかし、このモデルの狙いは、単に“太いネックを再現する”ことではありません。
ネック中央の厚みを感じる堅牢なニュアンスはありながらもカーブの影響なのか”ごん太”な印象は与えないネックです。
True Historic同様のロールド加工が施された指板エッジにより優れた弾き心地も特筆すべき点。
ネックの鳴りを考えると演奏性のために安易に細いグリップにはできない、1960のスリムなネックでもなく1958のような太さでもない1959という表現の難しいネックグリップ。
そのグリップをマーフィ氏の名前を冠して再現されるとなると、こちらのモデルが製作された時にどれほど特異なことが起こっていたのか、その衝撃は想像に難くありません。
そうした演奏感や鳴りまで含めて、Tom Murphy氏の理想に近づけられています。

仕様面もCustom Shopらしく抜かりなし
ボディはライトウェイト・ソリッド・マホガニーに、ハンドピックされた2ピース・フィギュアド・メイプルトップ。ネックはソリッド・マホガニー、ロングテノン、指板のローズウッドのいずれもハイドグルーフィットとされています。
ピックアップはCustombuckerを2基搭載。コントロールは500K CTSポット、Bumblebeeキャパシターを用いたハンドワイヤード・ハーネス、Switchcraftトグルスイッチという構成です。

このあたりは、True Historic期のCustom Shopらしい本格仕様。
しかし本モデルでは、その上にTom Murphy氏の審美眼とプレイヤー感覚が重ねられている点が最大の魅力です。
つまり、スペックだけを並べれば優秀なHistoric Les Paul。
しかし実物を前にすると、それだけでは説明しきれない“企画の深さと密度”を感じさせられます。
コレクション性と実用性が同居する“playable works of art”
“A Murphy Masterpiece”は、もちろんコレクション性の高いモデルです。
しかし、このモデルの面白さは、単にケースに収めて眺めるだけのギターではない点にあります。
Murphy Medium C-Shapeの特別なネックグリップ
プレイヤー視点で選ばれたパーツ。
木部の生鳴り、音の伸びがよくどこまでも伸びる基音とそれに纏わりつく倍音。
低域の太さや甘さ、ブライトで豊かな鳴りをCustombuckerの広いサウンドレンジでクリアに出力したサウンド。
そして、弾き込まれたヴィンテージのように手に馴染むPainted & Agedの質感。
飾って美しい。
構えて納得できる。
音を出して、さらに価値が伝わる。
このバランスこそ、Tom Murphy氏が目指した“playable works of art”という言葉に通じる部分ではないでしょうか。
Gibsonの公式ワンシートでも、Tom Murphy氏の作品は、オリジナルの魔法と雰囲気を捉えた“playable works of art”として紹介されています。


“A Murphy Masterpiece”という名にふさわしい歴史的1本です
このギターを紹介するうえで、最も避けたいのは、
「Tom Murphyがエイジングしたレスポールです」
という一文で終わらせてしまうことです。
もちろん、それだけでも十分に価値はあります。
しかし、このモデルの本質はそこではありません。
Tom Murphy氏が選ぶトップ。
Tom Murphy氏が描くバースト。
Tom Murphy氏が考えるトップカーブ。
Tom Murphy氏が求めるネックシェイプ。
Tom Murphy氏がプレイヤー目線で選んだパーツ。
そして、それらをひとつの”傑作”として成立させたGibson Custom Shop
マーフィ氏の名を冠した”傑作”を発表するためにひとつひとつに妥協なく製作されています。
“A Murphy Masterpiece”とは、
Tom Murphy氏の理想と審美眼が、Les Paul Standardという形に落とし込まれたモデルです。
True Historic期のCustom Shopが持つ高い再現力と、Tom Murphy氏の美意識。
その両方が重なった、歴史的価値のある一本。
1959 Les Paul Reissueをお探しの方はもちろん、
Murphy Agedの歴史や文脈に価値を感じる方にこそ、ぜひ手に取っていただきたいギターです。




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